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《翼の形状》 なぜ飛ぶのか−飛行機の翼とブーメラン−揚力,抗力,失速
ブーメランの翼の形は、旧式の飛行機の翼とそっくり
です。底面がほぼ平らで、背面はわずかにふくらんだ曲面となっています。
このような物体の周囲を気体や液体が通過する場合、どのような力が生じるでしょうか?。
流れる物質を取り扱う場合、これを流体と言い、理解を助けるため流線と言うものを考えます。これは水の流れの中に一定の間隔を取って墨を流した
り、空気の流れに煙をなびかせている状態です。
流体の中に円柱形の障害物を置いてみましょう。
流れている物質は障害物を避けて流れなければなりません。
次に流れの中に、断面が変化する板状の物体をいれた場合を考えてみます。最初に物体を流れに平行に入れてみます。
もちろん、流体は物体をよけて流れます。
この状態で板の一方-上面-を少しずつ膨らませていきます、すると流体の流れる“みちのり(道程)"は長くなります。長くなると、そこを流れる流 体の速度-流速-が速くなります。流速が大きくなればなるほど圧力が減少します。−−ベルヌーイの定理
この板の上面は下面にくらべ圧力が減少するため板は上に力を受けます。この力を揚力と言い、これがブーメランを持ち上げ、またあの独特の
飛行の力となっています。
【注意】
このような説明が通常はなされますが、ベルヌーイの定理で説明される結果が現実の測定値と必ずしも適合するわけではありません。揚力の説明にベルヌーイ
の定理は必要ないという立場も存在します。こちらもぜひ読んでおいてください。
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飛行機はなぜ飛ぶのか―「ベルヌーイの定理」説に挑む
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飛行機が飛ぶわけ―「ベルヌーイの定理」説をめぐる論争を解く(1)
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飛行機が飛ぶわけ―「ベルヌーイの定理」説をめぐる論争を解く(2)
【さらに注意】
もちろん、このアンダーソンの説明は定着しているわけではなく、下記のような好意的な批判もあります。
べ
ルヌーイの定理に
さらに挑む。――デビッド・アンダーソンが言いたかったこと。言い足りないこと
さて、次は流れをどんどん速くするか、迎え角を増していきます。すると圧力差はどんどん大きくなりますが、やがて流れが翼の表面からはがれてしまいま
す。これを失速と言います。失速状態になると、揚力が急激に低下して、抗力(流れの抵抗)が急激に増大してしまいます。
失速状態になると、ブーメランは揚力を失い、また強い抗力のため回転も停止して墜落します。
《もうひとつの揚力の説明》
ジェット戦闘機や紙飛行機−飛行機の両極端です−の翼は極めて薄くできています。これらの翼の揚力は空気の流れる向きを変えることにより、そ の反力が揚力になっています。ジェット機は空気抵抗を減らすため、紙飛行機は材料の制約で似た形になりました。ブーメラン−特に紙製の場合 −の揚力の一部はこの反力によるものが含まれます。
《ブーメランを支える》
ブーメランが投げられた時点では、ほぼ垂直面で回転しています。【右図】
この時、揚力のほとんどは横向きですが、一部の垂直方向の成分がブーメランを空中に支えています。ブーメランが投げられた初期の状態では、回転数も進行
速度も大きいためこのわずかな垂直方向の揚力成分でブーメランを空中に支える事ができるのです。
ブーメランの空の旅の終わりでは、ブーメランの進行速度も回転数も遅くなりますが、この時はブーメランはほぼ水平面で回転していますから、ブーメランは
竹とんぼのように空中でホバリングをする事になります。
初期の状態 終盤では・・・
ここで、大きな疑問にぶつかります。・・・ブーメランは前方に飛行していているため、ブーメランの上部が向かい風となりより大きな揚力が発
生しているため、揚力の中心は重心よりは上になります。
そのため、ブーメランは重心を中心にして左に転倒するはずですね。・・・その疑問は次の章で
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